フリーランス・個人事業主・自営業の違いは?開業届の有無やメリット・デメリットを解説
働き方改革による副業の解禁やクラウドサービスの普及など、さまざまな理由から、会社に所属せず個人で仕事をする人が増えています。会社員以外の仕事をして収入を得ている人は「フリーランス」「個人事業主」「自営業」などと呼ばれますが、それぞれの言葉の定義をご存じでしょうか?また、これから独立を考えている方は、「開業届けが必要なのはどれ?」と疑問に思うかもしれません。
そこで今回は、フリーランス・個人事業主・自営業の定義やメリット・デメリットに加えて、開業届けの有無についてもわかりやすく解説します。会社員以外の働き方に興味がある方や、「すでに自分で仕事をしているけど、言葉の定義がよくわからない」という方はぜひ参考にしてください。
フリーランス・個人事業主・自営業の違い
フリーランス・個人事業主・自営業には次のような違いがあります。
フリーランスとは?
フリーランスとは、会社に所属せず、仕事単位で働く人の総称です。個人で仕事をしている人を指すことが多く、ライターや動画編集者、プログラマーなど、何かしらの専門分野を軸に活動しています。プロジェクトもしくは案件単位で企業と契約を交わし、報酬を受け取ります。
ちなみに、「フリーランス」という言葉は、中世イタリアやフランスの傭兵部隊からきていると言われています。報酬に納得ができれば、どの君主の旗の下でも戦う騎士のことを「free・lance(自由な槍)」と呼び、そこから派生して、会社に属さずに仕事を請け負う人をフリーランスと呼ぶようになりました。
個人事業主とは?
個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を営んでいる人のことです。「個人事業主」は税制上の分類で、税務署に開業届を提出し、事業開始を申請した人のことを指します。
一方、「フリーランス」は税務上の名称ではなく、仕事単位で働く人の総称であるため、個人事業主よりも幅広い意味で使われます。
自営業とは?
自営業とは、自ら事業を行っている人の社会的な総称で、フリーランスとほぼ同じ意味です。フリーランスや個人事業主、法人を営む人も自らを「自営業」と呼ぶことがあります。
個人事業主は「開業届を提出済の個人」という明確な定義がありますが、自営業とフリーランスは社会的な総称であり、定義の幅が広いのが特徴です。
フリーランスと個人事業主のメリット・デメリット
開業届を提出する個人事業主は、フリーランスと比べてどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。順にご説明していきます。
フリーランスのメリット
仕事が選べる
フリーランスは、プロジェクトや案件単位で仕事を請け負うのが一般的な働き方なので、仕事や働く相手を選ぶことができます。ただし、独立直後はさまざまなタイプの案件を経験しておくことも大切です。
得意分野に集中できる
イラストやプログラミングなど、何かしらの専門分野がある方は、自分の得意分野を活かしてフリーランスとして活躍できるでしょう。総合職的な働き方を求められる会社員に比べて、得意分野のスキルを集中して高められるのもフリーランスの大きなメリットです。
ワークライフバランスをとりやすい
フリーランスなら、子育てや介護などの事情によって仕事をする時間や場所が限られている方でも、自分でスケジュールを調整できます。大きなプロジェクトで集中して働き、その後は1カ月間の休暇をとるなど、自分の理想の働き方を実現することも可能です。
フリーランスのデメリット
収入が安定しない
フリーランスとして独立したものの、思うように稼げずに苦労している方もいます。特に、独立直後は収入が不安定な時期が続くため、当面の生活費を確保し、案件の目途が立ってから独立すると安心です。
社会的信用が低いとされる場合がある
フリーランスは、毎月決まった給料がもらえるわけではないため、会社員よりも社会的信用が低く見られてしまう傾向があります。クレジットカードの審査に通りにくいことがあり、住宅ローンも収入面の条件が会社員と異なります。
働き方改革によってフリーランスの労働環境は改善されつつありますが、「社会的信用」という面では、まだ課題が多いと言えます。
労働基準法などの労働法規が適用されない
フリーランスは企業に雇用されている労働者ではないため、労働基準法などの労働法規が適用されません。しかし、フリーランスとして業務委託契約を結んでいる場合でも、会社から指揮命令等を受け、働く場所や時間を拘束されているなどの実態がある場合は「労働者」とみなされる場合があります。
その場合、企業は労働者を社会保険に加入させる義務や未払い賃金の支払い義務が生まれます。フリーランスとして働いている方は、自分が雇用契約に基づく労働者のようになっていないかどうか、一度確認してみましょう。
個人事業主のメリット
法人よりも手続きが簡単
法人を設立する場合は、登記や行政手続きといった複雑な手続きが必要ですが、個人事業主は開業届に必要事項を記載して税務署に提出するだけで済みます。
青色申告ができるようになる
フリーランスが開業届を提出すると、青色申告ができるようになります。最大65万円の控除が受けられるほか、赤字を最長3年間繰越できるなど、税制上のさまざまなメリットがあります。
▼下記にて「青色申告」についての記事を紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
青色申告って何?白色申告とは何が違う?メリットやデメリットについても詳しく解説
屋号があれば信用を得やすい
開業届には、「屋号」を記入する欄があります。屋号とは個人事業の名前のことで、会社の社名に相当するものです。屋号は必ず付けなければならないものではありませんが、開業届を提出している証明になるため、補助金や融資を受ける際に信用を得やすくなります。
また、屋号で銀行口座の開設も可能なので、プライベートと事業に使用する銀行口座を分けることもできます。
個人事業主のデメリット
確定申告を自分で行う必要がある
会社員のような給与所得者は年末調整で所得税額の計算や過不足精算が行われるため、基本的には自分で確定申告をする必要はありません。しかし、事業収入があるフリーランスや個人事業主は自分で確定申告を行う必要があり、確定申告を行わなかった場合はペナルティが課されることもあります。
▼下記にて「確定申告」についての記事を紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
個人事業主なら知っておくべき確定申告とは?やり方をわかりやすくご紹介
経営が悪化した場合でもすべて個人の負債になる
法人の場合、事業のための借入金は法人の債務という形になります。そのため、会社が倒産した場合でも経営者や出資者個人の負債にはなりません。しかし、個人事業主は、経営が悪化した場合の責任は「無制限」となり、すべて個人の負債になる点に注意が必要です。
融資を受けにくい
個人事業主は事業資金と個人の生活費の境目があいまいになることが多く、融資の審査が厳しくなることから、法人に比べて金融機関からの融資を受けにくいとされています。独立直後は個人事業主で開業し、事業でまとまった資金が必要になった段階で法人化を検討してもよいでしょう。
これから独立する人におすすめなのは?
独立を考えている方は、「フリーランスと個人事業主、どちらがいいのだろう?」と疑問に思うかもしれません。結論から言うと、独立する場合は開業届を出すことをおすすめします。
フリーランスが継続して事業を行う場合は、基本的に開業届の提出がおすすめです。開業届を出さないことによる罰則はありませんが、青色申告や屋号での銀行口座の開設が可能になるなどメリットが多いので、事業を開始したら速やかに開業届を提出しましょう。
副業だけであれば開業届は不要になるケースが多くなります。例えば、「フリマアプリで不用品を売っている」「動画サイトに時々趣味で投稿している」などの副業は税制上「雑所得」とされることが多く、開業届は必要ありません。
▼下記にて「個人事業主になるための必要な手続き」についての記事を紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
個人事業主になるには何から始めれば?開業届など必要な書類と手続きを解説
フリーランスも開業届を提出しよう
フリーランスは開業届を提出するだけで簡単に個人事業主になれます。法人と比べて必要な手続きも少なく、青色申告など税制上のメリットもあるため、独立したタイミングで開業届を提出しておきましょう。初めは個人事業主として開業し、事業が大きくなってきたタイミングで法人化を検討するのも一つの方法です。
フリーランス・個人事業主の場合も、雇用されている「労働者」に比べて社会的なセーフティーネットは薄くなります。当面の生活費を確保してから独立し、独立後も少しずつ老後の蓄えを増やすなど、資金管理は慎重に行いましょう。