個人事業主がSDGsに取り組むメリットとは?具体的な取り組み方も解説
近年、耳にすることが増えた「SDGs(持続可能な開発目標)」は、2015年の国連サミットで採択された国際目標です。日本では、大企業や自治体を中心としてSDGsの目標に沿ったさまざまな取り組みが行われています。
しかし、「SDGsは大企業が取り組むもの」というイメージが強く、個人事業主がSDGsに取り組む社会的意義やメリットは、あまり認知されていないのが現状です。
そこで今回は、SDGsの基本から、個人事業主がSDGsに取り組むメリットや取り組み方まで徹底解説します。
SDGsとは?
SDGsは 「Sustainable Development Goals」の頭文字をとったものです。日本語では「持続可能な開発目標」と訳され、最後の小文字の「s」は「Goals」のsにあたります。持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標で、人間、豊かさ、パートナーシップ、平和、自然などに関する17のゴールと169のターゲットで構成されています。
【SDGsの17のゴール】
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各ゴールには「ターゲット」と呼ばれる具体的な数値目標が設定されています。例えば、
「貧困をなくそう」には、「2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」というターゲットがあります。ターゲットは各ゴールに対して複数設定されています。
おけいこタウンでは「SDGs」の意味・目的を詳しく紹介した記事を掲載しておりますので、ぜひご覧下さい。
【これを読めばわかる】SDGsとは?その意味や目標をわかりやすく解説!
SDGsは個人単位でも取り組みやすい
SDGsの前身となったのは、開発分野における国際社会共通の目標である「MDGs」です。
MDGsは「Millennium Development Goals」の略で、日本語に訳すと「ミレニアム開発目標」となります。貧困や教育、ジェンダー平等推進など8つの目標を掲げており、達成期限の2015年までに一定の成果をあげました。
しかし、MDGsで未達となった課題も多く、それらの課題に引き続き取り組み、新たな課題に対応する目的でSDGsが生まれました。
MDGsは主に発展途上国に焦点を当てた目標が多く、先進国は発展途上国をサポートする役割を担っていました。一方、SDGsは、先進国も対象になっているという違いがあります。設定されている目標も、海や陸地を守るなど「自分ごと」にしやすいものが多く、個人単位でも取り組みやすいのが特徴です。
SDGsは「持続可能な個人事業主」を目指すうえでも大切な考え方
財務省財務総合政策研究所が平成29年(2017年)第3号(通巻第131号)にて発表した「フィナンシャル・レビュー」によると、⽇本の企業数は、2015 年末の約400 万社から2040 年末には約 300 万社(73.4%)へと減少することが予想されており、特に⾸都圏や⼤都市以外での減少が顕著です。企業から仕事を請け負う個人事業主にとって、企業数の減少は取引先数の減少を意味します。
SDGsは、「目標とターゲットがすべての国、すべての人々、及びすべての部分で満たされるよう、誰一人取り残さない」ということを原則としています。個人事業主を「持続可能」にするためにも、これまで関係ないと思っていたような社会の動きに関⼼を持ち、社会貢献する意識を持つことが重要といえます。持続可能な社会を自分たちの手で守っていきましょう。
個人事業主がSDGsに取り組むメリット
個人事業主がSDGsに取り組むことで、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。ここでは、主なメリットを4つご紹介します。
ブランディングにつながる
個人事業主がSDGsに取り組むことでブランディングにつながります。
株式会社電通が2018年に実施した「SDGsに関する生活者調査」によると、SDGsの17の目標に対する平均の共感度は73.1%となっており、SDGsが消費者の間にかなり浸透していることが分かります。
テレビCMなどの大々的なプロモーションが難しい個人事業主にとっては、SDGsをきっかけとしたブランディングは重要な戦略になり得ます。特に、消費者の間では「水」「エネルギー」「海」のテーマについて企業に期待する傾向が高く、これらのテーマと関連するビジネスに取り組んでいる個人事業主は、SDGsに取り組むことでビジネスを加速させることが期待できるでしょう。
若年層とのつながりが生まれる
25歳以下のZ世代を中心とした若年層は、新しいテクノロジーだけでなく社会課題に関心が高いといわれています。SDGsに取り組む企業を高く評価する傾向があり、SDGs がZ世代の購買行動や就職活動に大きく影響していると考えられています。
日本経済新聞社が実施した「Z世代サステナブル意識調査」によると、「SDGsや社会的課題への取り組みを行う企業に対する印象」について、「好感が持てる」「製品・サービスを利用したいと思う」「働いてみたいと思う」のすべての項目で、Z世代が「とても当てはまる」と答えた割合が、上の世代よりも高いという結果が出ています。
Z世代はSDGsを「自分ごと」と捉える意識があります。SDGsをきっかけとして、若年層とのつながりが生まれることも期待できます。
大企業との取引に有利
近年、SDGsに積極的に取り組んでいる大企業が、自社の取引先に対してSDGsに取り組むよう対応を要請する動きがあります。
一例として、住宅総合メーカーの大和ハウス工業株式会社は、森林破壊ゼロの方針を策定しないサプライヤーからの木材調達を原則禁止としました。このような動きは、企業から仕事を請け負う個人事業主やフリーランスにも影響する可能性が十分にあります。
その一方で、中小企業のSDGsへの取り組みは、まだ十分とはいえません。独立行政法人中小企業基盤整備機構が2022年3月1日に発表した「中小企業のSDGs推進に関する実態調査」によると、SDGsについて、「現在すでに取り組んでいる」「現在は取り組んでいないが、今後取り組んでいく予定」と回答した中小企業の割合は30.6%に留まりました。
中小企業で3割弱であるということは、個人事業主やフリーランスでSDGsに取り組んでいる人は、まだまだ少ないと推測できます。そのため、早く始めれば始めるほど取引先企業に対して優位性を示せます。
融資を受けやすくなる
SDGsに取り組む企業に対して、自治体や金融機関が融資の面で優遇する動きも出ています。
金融機関では、通常の借り入れとは別枠で行う「SDGs融資」が増えてきています。自治体でも独自の取り組みが行われており、神奈川県には「SDGsパートナー支援融資」と呼ばれる、中小企業者が運転資金や設備資金の融資を受けられる制度があります。
「融資の話は個人事業主には関係ないのでは?」と思うかもしれませんが、現在の事業が軌道に乗って拡大したいと思った時に法人化を検討することもあるでしょう。また、新たにビジネスを始める際に資金調達を行うのであれば、個人事業主よりも信頼度が高い法人の方が有利です。
個人事業主のうちからSDGsに取り組んでおくことで、将来的に融資を受けやすくなる可能性があることを頭に入れておきましょう。
個人事業主のSDGsへの取り組み方
SDGsは、法人や個人という枠組みを超えて、「全員で取り組むべきもの」という意識を持つことが大切です。では、実際に個人事業主がSDGsへ取り組もうとした場合、具体的に何をすれば良いのでしょうか。個人事業主がSDGsに取り組む際のポイントと併せて解説します。
事業のなかでSDGsにつなげられる部分を探す
まずは、自分が行っている事業のなかでSDGsにつなげられる部分を探してみましょう。個人事業主の場合、商品やサービスそのものでSDGsに貢献するのが一番の近道です。例えば、仕入れの際に、地球に優しい生産方式で生産された持続可能な商品の証である「認証マーク」が付いた商品を選ぶことでSDGsにつなげられます。
日常生活のなかでSDGsを意識する
個人事業主は、仕事とプライベートの境目があいまいです。そのため、日常生活のなかでSDGsを意識することも、個人事業主としてSDGsに取り組むことにつながるでしょう。
外出の際はマイボトルを使用してプラスチックごみを削減し、紙はリサイクルするといった何気ない行動も立派なSDGsです。個人単位でも始めやすいのがSDGsのメリットなので、できることから始めていきましょう。
取り組んだ内容を公表する
SDGsに取り組んだら、それをSNSやホームページなどで積極的に発信しましょう。SDGsに取り組んでいることをアピールすることで、SDGsに関心が高い企業や個人とのつながりが生まれる可能性があります。そこからビジネスに発展することもあるでしょう。
今日からSDGsを始めよう
SDGsは、すべての国のすべての人に対する目標であり、「誰一人取り残さない」を原則としています。
多くの個人事業主は、大企業のような世間に対する影響力はありません。しかし、一人ひとりができることから始めることで、やがて大きな力となります。その意識が、誰一人取り残さないSDGsの実現につながっていくでしょう。
今日からできるSDGsの取り組みを、自分なりに見つけてみましょう。
おけいこタウンでは「SDGs」の具体的な取り組みを掲載しておりますので、ぜひご覧ください。