確定申告・給付金の申請に必要な売上台帳の書き方について
個人事業主(フリーランス)として独立をした翌年になると、昨年の売上や経費から自分の所得を算出して確定申告をする必要があります。そのためには、1年間の売上や経費を正確に記帳した「売上台帳」を作成しておかなければなりません。また売上台帳は、確定申告だけでなく、売上減少に伴う月次支援金などの給付金の申請にも必要です。
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この記事では、個人事業主になって初めて売上台帳を作成する人を対象に、売上台帳の書き方と記帳すべき情報についてご紹介します。
- 01売上台帳とは
- 02売上台帳の作り方
- 03売上台帳の書き方を解説
- 04まとめ
売上台帳とは
売上台帳とは、日々の取引における売上を記録した帳簿のことです。売上台帳を作っておくことで、過去の取引を効率的に確認することができるため、確定申告の際に役立ちます。また売上減少に伴う給付金の申請の際には、対象月の売上を明示する必要があります。「いつ」「誰に」「何を」「いくらで」売り上げたのか記述しておきましょう。
売上台帳に決まった形式はない
売上台帳には決まった形式がないため、現在会計ソフトを使っている人はそのまま利用を継続しても構いませんし、新たにノートを購入したり、Excelで作成したりしてもよいでしょう。
ただし売上台帳に必要な情報はあらかじめ決まっているため、入力フォームが設けられているものを使用しましょう。会計ソフトを使用している場合は問題ありませんが、手書きやExcelで作成する場合は情報の漏れに注意が必要です。ノートを購入する場合は市販のノートではなく、「売上帳」を購入することをおすすめします。また、Excelを使用する場合、インターネット上で無料配布されているテンプレートを活用するとよいでしょう。
給付金の申請に必要な情報や資料とは
現在申請が可能な月次支援金は、前年より売上が減少していることを証明する必要があるため、「対象月の売上」がわかるように売上台帳に記入しておきましょう。
具体的に必要な書類として、
・売上台帳(手書きでもデータでもよい)
・確定申告書第一表の控え
・所得税青色申告決算書(青色申告の場合のみ)
・本人確認書類
・通帳の写し
・宣誓・同意書
が必要になります。
この中でも特に売上台帳と確定申告第一表および所得税青色申告決算書の控えは、売上が減少していることを証明するために必要な書類です。書類の提出とあわせて、「昨年に比べていくら減少しているか」を説明できるようにしておくと手続きがスムーズになるためおすすめです。
売上台帳の作り方
売上台帳を作る際にはまず、会計ソフトで作成するか、Excelもしくは手書きで作成するかを決めましょう。会計ソフトを利用する場合は確定申告にも活用できる有料の会計ソフトを使用する方法と無料の会計ソフトで作成する方法があります。Excelを使用する場合は、無料で配布されているテンプレートを利用して作成する方法と自身で項目などを作成する方法があります。また、売上台帳やノートを購入して手書きで記入する方法もあります。
会計ソフトやExcel、手書きのノートも問題なく売上台帳として使用することができますが、会計ソフトやクラウドサービスへ支払う費用を捻出できる場合、会計ソフトの使用をおすすめします。会計ソフトであれば紛失のリスクを軽減でき、確定申告に必要な情報を同時に入力してくれるからです。売上台帳としてのフォーマットが作成できたら、次は具体的に記入する内容についてお伝えします。
売上台帳に記載する必要がある内容
売上台帳に記入する内容については、以下の項目が必要です。
・計上月(何月に売り上げたのか)
・売上が発生した日付
・取引先(販売した相手)
・販売した内容(商品やサービス)
・売上金額
・売上の合計金額
このうち1つでも情報が漏れていると、書類に不備があるとして申請が却下されたり給付が遅れたりする原因になります。書類に不備がないように、このあとお伝えする「売上台帳作成に伴う注意点」についても確認しておきましょう。
売上台帳作成に伴う注意点を解説
売上台帳を作成する場合は先述した「記載する必要がある内容」に加え、保存期間や作成内容にも注意が必要です。特に確定申告では、白色申告と青色申告のうちどちらで申告を行うのかで記帳方法も異なります。特別な理由がない限りは、青色申告を行う方がメリットは大きいです。
青色申告だと最高で65万円(電子帳簿保存かe-Taxにより申告した場合)の青色申告特別控除を受けることができます。また親族に支払った給与を経費にできる(青色事業専従者給与)ことや、事業などにより生じた損失を翌年以降に繰り越すことができることも青色申告を行うことによるメリットです。
保存期間と作成内容の違いに注意
白色申告、青色申告ともに原則として7年間、売上台帳(帳簿)の保存が義務付けられています。また決算や取引に使用した書類については、白色申告者の場合は5年間、青色申告者については7年間の保存(一部書類については5年間)が必要です。
記帳方法については、白色申告の場合は一般的もしくは簡易な方法により売上台帳を作成すれば問題ありませんが、最高65万円の青色申告控除を適用させるためには複式簿記を使って記帳する必要があります。給付金の申請において複式簿記の売上台帳は必要ありませんが、確定申告を前提として複式簿記による記帳をしておくといいでしょう。
売上がなかった月についてはその旨を記述する
こちらは給付金の申請に伴う注意になりますが、売上金がなかった場合でもその旨を記述する必要があります。「○月は売上がなかった」もしくは「○月売上合計金額0円」と記述しておくことで、申請の不備を避けることができます。
売上台帳の書き方を解説
ここからは売上台帳へ記帳する方法を解説します。前提として売上台帳を作成する場合は、 所得の金額が正確に計算できるよう、取引のうち、総収入金額および必要経費に関する事項について「整然かつ明瞭に記録」しなければなりません。
画像を用いて具体的に解説
先述した通り、下記事項が売上台帳に必要な情報です。
・計上月(何月に売り上げたのか)
・売上が発生した日付
・取引先(販売した相手)
・販売した内容(商品やサービス)
・売上金額
・売上の合計金額
ここからは、記帳の際に意識しておきたい情報をお伝えします。(1)~(20)について、それぞれ解説していきます。
収入について
(1)取引の年月日を記入します。
(2)事由・相手方の名称を記入します。
(3)売上金額を記入します。
(4)雑収入等の金額を記入します。
経費について
経費が発生した場合は、給料賃金、外注工賃、減価償却費、貸倒金、地代家賃、利子割引料およびその他の経費に区分して、それぞれ「(5)仕入金額」「(6)~(20)に相当する金額」を記入します。
その他の注意点について
「売上」や「仕入」「経費」の金額を記帳すると以下のようになります。記帳する内容については先述した通りですが、記帳に使用した領収書や請求書は必ず保管しておきましょう。
※国税庁HP「帳簿の記帳のしかた」より引用
まとめ
ここまで売上台帳を書く際に必要な情報や注意点について解説してきました。売上台帳に決まった形式はありませんが、記帳する内容に不備があると給付金の申請が却下されたり給付金の振込みが遅れたりする場合があります。そうならないように、売上や経費の記帳を正確に行いましょう。記帳の方法がわからないときは、税務署から会計ソフトを使用した指導を受けることができる場合があります。
個人事業主として独立をすると普段の仕事に加えて、事務や経理も自身で行わなければなりません。売上台帳を作成する際は、是非この記事を参考にしてください。
【監修者プロフィール】
並木 一真(なみき かずま)
税理士、1級ファイナンシャルプランナー技能士、相続診断士、事業承継・M&Aエキスパート
2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等、幅広く税理士業務に取り組んでいる。