個人事業主の税金が免除になるのはどんな場合? 免除される税金とその条件は?
個人事業主(先生)として活動する人は、所得税・事業税・住民税・消費税などの税金を納めることになります。
ただし、すべての個人事業主に納税義務が生じるわけではなく、計算した結果、納付税額が0円となる場合や、免税事業者に該当する場合もあります。今回は、それぞれの税金の基礎知識と、納税しなくていい(免除となる)場合についてご紹介していきます。
個人事業主(先生)が納税する税金
そもそも個人事業主(先生)が意識しておかなければならない税金には、どのようなものがあるのでしょうか?
税金の種類 |
どのような税金か |
納税方法 |
所得税 |
毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得に対して課せられる税金。1年間の所得から各種所得控除額を差し引いた額を計算して、納税額を算出する |
確定申告書を提出し納税する |
個人事業税 |
法律で指定された事業を行っている個人事業主が、青色申告特別控除前の事業所得が290万円を超える場合に納税する |
都道府県税事務所から届く通知書に応じて納税する |
住民税 |
都道府県や市区町村の住民に納税義務がある |
市区町村から届く通知書に応じて納税する |
消費税 |
顧客から預かった消費税から仕入れ等にかかった消費税を差し引き、納税額を計算する |
事業主が申告を行い納税する |
では、それぞれの税金について確認していきましょう。
所得税
所得税は毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得に対し、課せられる税金です。個人事業主が自分で(あるいは税理士に依頼して)1年間の所得や納税額を計算して確定申告書を提出し、納税します。
計算の方法をまとめると、次のようになります。
収入-経費=所得
所得-所得控除=課税所得
課税所得×税率=所得税額
所得税額-税額控除=申告納税額
個人事業税
個人事業主の行う事業が、地方税法等で定められた事業(法定業種、70種類)に該当する場合、都道府県に対して事業税を納付しなければなりません。
都道府県税事務所から通知書が届くため、それに応じて納税します。所得税の確定申告をしている場合、申告書の「事業税に関する事項」に記入していれば、個人事業税を新たに申告する必要はありません。
住民税
都道府県や市区町村の住民に対して課せられる税金です。
住民税は、所得割と均等割の2つで構成されています。
・所得割……納税額が前年の所得に応じて決まる
・均等割……住民が一律の金額を均等に負担する
所得税の確定申告を行っている人は、そのデータをもとに住民税の納税額が計算され、通知書が市区町村から届くため、それに応じて納税します。
消費税
個人事業主(先生)は、商品やサービスを購入した人から消費税を預かります。
一方で、商品やサービスを提供するために仕入れをしたり、経費を支払ったりしています。
消費税の納税義務が生じた個人事業主は、「消費税及び地方消費税の確定申告書」を提出し、納税する必要があります。
申告し納税する際には、
「顧客から預かった消費税額 - 個人事業主が支払った消費税額」
を計算します。
それぞれの税が免除となる条件は?
個人事業主全員が、すべての税金を納付することになるとは限りません。免税事業者となる人や、納税額を計算した結果、納付税額が0円になる人もいます。
税金を納付する必要がなくなる主な場合を、ご紹介していきます。
税金の種類 |
税金を納付する必要がなくなる場合 |
所得税 |
合計所得金額が48万円以下の場合、納付税額が0円となる |
個人事業税 |
青色申告特別控除前の所得が290万円を下回っている場合、納付税額が0円となる |
住民税 |
所得金額に応じて、均等割・所得割ともに課税されない場合と、所得割のみが課税されない場合がある |
消費税 |
次の両方を満たす場合は免税事業者となる ・基準期間における課税売上高が1,000万円以下 ・特定期間における課税売上高または給与等支払額が1,000万円以下 |
所得税
合計所得金額が48万円以下の人は、納税すべき金額が0円になります。それ以上の所得がある人も、扶養控除や社会保険料控除等の適用によっては納税金額が0円となる場合があります。
また、災害により住宅や家財などに損害を受けた人は、
・確定申告において「所得税法」に定める雑損控除の方法
・「災害減免法」に定める税金の軽減免除による方法
のどちらか有利な方法で、所得税及び復興特別所得税の軽減または免除を受けられる場合もあることを、万が一の場合に備えて知っておくといいでしょう。
個人事業税
青色申告特別控除前の所得が290万円を下回っている場合は、納付税額の計算をすると0円という結果になります。
また、次のような場合は、税金の減免をしてもらえる可能性があるため、手続きを行いましょう。
・地震や洪水などの災害に遭ったとき
・生活保護を受けているとき
・自分や生計を共にしている家族の高額な医療費を払ったとき
・本人や扶養する家族が障がい者のとき
住民税
住民税が非課税となる場合には、所得額に応じていくつかのパターンがあります。
令和3年度以降の制度をご紹介します。
均等割・所得割の課税の有無 |
非課税となる条件 |
均等割・所得割ともに課税されない |
・生活保護制度の「生活扶助」を受けている ・障がい者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下 ・前年の合計所得金額が、次の計算で求めた金額以下の人 (1)同一生計配偶者または扶養親族がいる場合 35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の人数)+2 (2)同一生計配偶者または扶養親族がいない場合 35万円+10万円=45万円 |
所得割が課税されない |
前年の総所得金額等が、次の計算で求めた金額以下の人 (1)同一生計配偶者または扶養親族がいる場合 35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の人数)+3 (2)同一生計配偶者または扶養親族がいない場合 35万円+10万円=45万円 |
消費税
納税義務があるのは、基準期間(納税義務を判定する年の前々年)の課税売上高が1,000万円を超えている個人事業主(先生)です。
基準期間の売上が仮に1,000万円以下でも、特定期間(納税義務を判定する前年の1月1日~6月30日までの期間)の課税売上高または給与等支払額が1,000万円超の場合、納税義務は次の表のようになります。
特定期間における課税売上高 |
特定期間における給与等支払額 |
免税・課税の判定 |
1,000万円以下 |
1,000万円以下 |
免税事業者 |
1,000万円以下 |
1,000万円超 |
免税事業者 |
1,000円超 |
1,000万円以下 |
免税事業者 |
1,000万円超 |
1,000万円超 |
課税事業者 |
納税額を抑えるために
納付する税金の額を抑える取り組みを「節税」と呼びます。ここからは、節税のための方法をご紹介していきます。
経費を漏れなく計上して所得金額を抑える
売上や所得が大きくなれば、納税すべき税金やその額も増えるため、経費を漏れなく計上して所得額を抑えましょう。
ただし、節税を重視し過ぎた結果、銀行で融資を受けたい場合に不利になる、というケースもあるため、売上・利益と経費のバランスを考えて行いましょう。
災害等で資金繰りが苦しい場合
災害など特殊な事情があって税金を減免してもらいたいときは、税務署や市区町村に相談しましょう。
例えば、所得税を納税できないことを、税務署に相談せず放置していると、財産の差押えをされることもあります。しかし、税務署に「一時的に納付することが困難な理由がある」ことを申請すると、財産の換価(売却)や差押えなどの猶予(換価の猶予、納税の猶予)が認められる場合もあるのです。
納税額が0円であっても申告そのものは必要な場合も
納付すべき税額が計算の結果0円となった場合でも、申告そのものは必要な場合があります。
所得税や消費税の還付を受けたい場合などがその例です。忘れずに申告を行いましょう。
まとめ
個人事業主は、所得税や個人事業税、住民税、消費税などの知識を持ち、申告と納税のルールを守って事業を続けていく必要があります。特に所得税や消費税は個人事業主が納付すべき税額を計算して申告しなければいけません。
ただし、税額を計算した結果、納付すべき税額が0円になったり、条件によって納税義務がない免税事業者となったりする場合もあります。それぞれの税金について十分に理解し、適度な節税にも取り組んでいきましょう。
【監修者プロフィール】
服部 大(はっとり だい):税理士/中小企業診断士
2020年2月30歳のときに名古屋市内で税理士事務所を開業。平均年齢が60歳を超える税理士業界では数少ない若手税理士。
単発の税務相談や執筆活動なども行い「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。同年代の経営者やフリーランス、副業に取り組む方々の良き相談相手となれるよう日々奮闘中。
服部大税理士事務所:https://zeirishihattori.com