個人事業主の社会保険ってどうするの?仕組や加入方法についてわかりやすく解説
個人事業主として独立するにあたって、「何から準備をすればいいかわからない」「注意すべきことはなんだろう?」とお悩みではないでしょうか。
会社に勤めていると当たり前のように加入している社会保険ですが、会社を辞めて個人事業主になると会社員時代の保障がとても優れていたことに気づきます。もしあなたが独立を考えているなら、自身の保障についても知ることが必要です。
健康保険と国民健康保険の違いとは
個人事業主になると国民健康保険へ加入することになります。国民健康保険は会社員と公務員以外の人が加入することになる公的保険で、保険料や保障内容も会社員とは異なります。
個人事業主として独立するとまず国民健康保険料が高いことに驚きます。サラリーマンとして会社に勤めていたときは、社会保険料を労使折半するので大きな負担がありませんでしたが、個人事業主は国民健康保険料を全額負担することになるからです。
また「傷病手当金」や「出産手当金」等の保障内容については、健康保険独自の制度であるため国民健康保険では支給しない市区町村も多いです。自分が病気やケガで働けなくなった場合に備えて、休業中の収入を補てんする保険を用意しておくといいでしょう。
任意継続被保険者制度を利用しよう
会社を辞めたあとの健康保険については3つの選択肢があります。
・国民健康保険に加入する
・健康保険を継続する
・家族の扶養に入る
上記のうちどれかを選択することが必要です。
「扶養に入る」ことも一つの選択肢ですが、一般的には「国民健康保険に加入する」もしくは「健康保険を継続する」人がほとんどです。健康保険を継続することを「任意継続被保険者制度」といって、会社に勤めていた際の保険料(労使折半はなくなる)で加入を継続することが可能です。
ただし任意継続の期間は最長2年間と定められていることや、原則として傷病手当金や出産手当金を受けることができない点には注意が必要です。「任意継続被保険者制度」を利用する場合の保険料と、国民健康保険に加入する場合の保険料とを比べて、保険料が安いほうに加入するといいでしょう。
扶養家族がいる場合は、健康保険を継続することで引き続き健康保険の被扶養者とすることができるので、任意継続のほうが有利となるケースが多くなります。
国民健康保険には扶養という概念がなく、家族それぞれの年齢や収入に応じた保険料がかかるからです
なお任意継続被保険者制度を利用する場合は、退職(資格喪失)してから20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出することが必要です。
社会保険の代わりになる保険を用意することが必要
会社員と個人事業主が保障されている内容の違いは以下のとおりです。
社会保険の種別 |
会社員 |
個人事業主 |
医療保険 |
健康保険 |
国民健康保険 |
年金保険 |
厚生年金 |
国民年金 |
介護保険 |
40歳以上で加入 |
40歳以上で加入 |
雇用保険 |
制度あり |
制度なし |
労災保険 |
制度あり |
制度なし |
個人事業主になると「傷病手当金」を受け取ることができない点にはついては先述しましたが、年金保険については「厚生年金」から「国民年金」になるため、将来的に受け取れる年金が厚生年金と比べると減少します。任意で国民年金基金に加入できますが、それに加えてiDeCoや個人年金保険等を活用して、年金の上乗せ部分を準備することをおすすめします。
民間の任意保険も活用する
健康保険の代わりになる保障を用意するには、民間の保険も活用するといいでしょう。保険は、自分にもしものことがあったときに備えて加入するものです。個人事業主として独立した際に不安なことを、お金で補てんできるように準備できれば安心です。
具体的には、自分がケガや病気によって働けなくなった場合の所得を補償する「所得補償保険」や、病気やケガによる治療費や入院費用等を補てんする「医療保険」など、目的に応じた幅広い保険があります。
老後資金は個人年金保険で準備する
会社員が加入する厚生年金保険では、国民年金に加えて厚生年金部分を受給できる“2階建ての年金制度”であるため、老後の生活資金として一定の安心感を与えてくれます。一方で個人事業主は国民年金に加入することとなり、会社員のように厚生年金の上乗せ部分を受給することができなくなってしまいます。
そのため、個人事業主になってからでも、老後の生活に備えて年金の上乗せ部分を自分で準備することをおすすめします。
個人年金保険のように死亡保険と老後の年金を同時に準備する方法もありますが、節税を意識するなら国民年金基金やiDeCoを活用するといいでしょう。
どちらも掛け金の全額が所得から控除されるからです。
まとめ
個人事業主として独立すると国民健康保険へ加入することになります。すると、会社員時代と比べて社会保険の保障が手薄になってしまいます。また年金については厚生年金から国民年金になるため、将来的に受け取れる年金が厚生年金と比べて減少します。以上の注意点を踏まえたうえで、個人事業主として独立する前に考えておきたいことは次の3つです。
・会社を辞めたあと健康保険の任意継続を利用するか決めましょう
・社会保険の代わりになる保険を検討しましょう
・国民年金の上乗せ部分を用意することで、老後の生活資金を準備しましょう
この記事を読むことで、独立後の不安が少しでも和らげば幸いです。
【監修者プロフィール】
服部 大(はっとり だい):税理士/中小企業診断士
2020年2月30歳のときに名古屋市内で税理士事務所を開業。平均年齢が60歳を超える税理士業界では数少ない若手税理士。
単発の税務相談や執筆活動なども行い「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。同年代の経営者やフリーランス、副業に取り組む方々の良き相談相手となれるよう日々奮闘中。
服部大税理士事務所:https://zeirishihattori.com