個人事業主が納税する住民税の仕組みや計算方法は?
毎年6月になると、個人事業主のもとに住民税の納税通知書が送られてきます。確定申告のとき個人事業主が提出したデータをもとに、市区町村が住民税額を計算するため、個人事業主が自分で住民税の計算をする機会は少ないでしょう。とはいえ、会社員時代と異なり、自分で納付する必要があるものです。そのため、詳細を理解しておく方が良いでしょう。今回は、住民税の仕組みや計算方法、納税の方法についてご紹介していきます。
住民税の基礎知識
そもそも住民税とはどのような税金なのでしょうか?
住民税とは
住民税とは、都道府県と市区町村に支払う地方税を総称するものです。地方自治体による公共サービス(ごみ処理、福祉、救急など)を賄うために設けられています。
住民税は、都道府県が課税する道府県民税と市区町村が課税する市区町村民税で構成されます。それぞれが「均等割」と「所得割」で構成されています。
均等割
均等割は、所得金額にかかわらず定額で課税されます。
原則として次の通りです。
・都道府県民税の均等割……1,000円
・市区町村民税の均等割……3,000円
ただし、2014~2023年度は、復興財源確保のための税制措置として、どちらも500円ずつ加算されます。
所得割
所得割は、前年の所得金額に応じて金額が変わります。
税率は原則として次の通りです。
・都道府県民税……4%
・市区町村民税……6%
なお、均等割、所得割ともに、自治体によって特別な金額や税率を設けていることもあるため、自治体の公式サイトなどで確認してください。
所得控除
前年の所得金額を計算する上で、納税者の状況に応じて所得控除を適用することができます。ただし、住民税と所得税で所得控除の金額が違うものがあります。
住民税の計算の上で所得控除ができるのは、下記の項目です。
・雑損控除
・医療費控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・障害者控除
・寡婦(夫)控除
・ひとり親控除
・勤労学生控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・扶養控除
・基礎控除
住民税と所得税で所得控除額が違うものは次の通りです。
所得控除の種類 |
住民税 |
所得税 |
生命保険料控除の限度額 |
7万円 |
12万円 |
地震保険料控除の限度額 |
2万5千円 |
5万円 |
障害者控除 |
26万円 |
27万円 |
特別障害者控除 |
30万円 |
40万円 |
同居特別障害者控除 |
53万円 |
75万円 |
寡婦(夫)控除 |
26万円 |
27万円 |
ひとり親控除 |
30万円 |
35万円 |
勤労学生控除 |
26万円 |
27万円 |
配偶者控除 |
33万円 |
38万円 |
老人配偶者控除 |
38万円 |
48万円 |
配偶者特別控除の限度額 |
33万円 |
38万円 |
扶養控除 |
33万円 |
38万円 |
特定扶養控除 |
45万円 |
63万円 |
老人扶養控除 |
38万円 |
48万円 |
同居老親等扶養控除 |
45万円 |
58万円 |
基礎控除 |
43万円 |
48万円 |
住民税の計算方法
では、住民税の税額を計算する方法を確認しましょう。
1.総所得金額等の算出
1年間の所得金額-損失の繰越控除=総所得金額等
1月1日から12月31日までの収入額から、収入を得るために必要とした経費を差し引いて、1年間の所得金額を計算します。
損失の繰越控除がある場合は、これを1年間の所得金額から差し引きます。
2.所得控除の合計額の算出
納税者の状況に応じて、適用できる所得控除とその合計額を計算します。
3.課税標準額の算出
総所得金額-所得控除の合計額=課税標準額
1.の総所得金額等から、2.の所得控除の合計額を差し引いて、課税標準額を算出します。
4.所得割額の計算
課税標準額×税率=税額控除前の所得割額
課税標準額に税率を掛けて、税額控除前の所得割額を算出します。
5.税額控除の計算
納税者の状況に応じて、適用できる税額控除とその合計額を算出します。
住民税で適用できる税額控除には、次のようなものがあります。
・配当控除
・外国税額控除
・寄附金税額控除
・配当割額及び株式譲渡所得割額の控除
・住宅借入金等特別税額控除
・調整控除
6.税額控除後の所得割額の計算
税額控除前の所得割額-税額控除の額=税額控除後の所得割額
4.で算出した税額控除前の所得割額から、5.で算出した税額控除の額を差し引いて、税額控除後の所得割額を求めます。
7.住民税額の計算
税額控除後の所得割額+均等割額=住民税額
税額控除後の所得割額と均等割額を合計して住民税額を計算します。
住民税の納税方法
住民税の納税はどのようにするのでしょうか?
月ごろ送付される納税通知書で税額を確認
個人事業主が所得税の確定申告時に提出したデータをもとに、市区町村が住民税の納税額を計算し、納税者に納税通知書を送付します。
納税者は、年4回に分けて住民税を納税することができます。この場合の納付期限は次の通りです。
・6月末
・8月末
・10月末
・翌年1月末
支払う方法には次のようなものがあり、自治体によってどの方法を使えるかが異なります。
・金融機関の窓口やコンビニエンスストア、役場の窓口で納付書と現金を使って納付
・納付書と電子マネーで納付
・金融機関の口座引き落としにより納付
・ペイジー対応の納付書を使い、インターネットバンキングやモバイルバンキング、ATMで納付
・一部の市区町村ではクレジットカード決済が可能
住民税の滞納に注意
住民税を納め忘れた場合や、銀行口座に十分な残高がなく引き落としができなかった場合は、市区町村から督促状が届きます。できるだけ早く納付しましょう。
納付が遅れると延滞金が課されます。電話での督促を受けたり、滞納が続くと財産が差押えられたりする場合もあります。経済的に納付が厳しい場合は、早めに市区町村に相談しましょう。
まとめ
住民税は都道府県と市区町村に納税する地方税です。個人事業主が所得税の確定申告で提出したデータをもとに、市区町村が住民税額を計算し、納税者に納税額を通知します。
所得税と同じように、住民税にも所得控除や税額控除が適用されます。ただし、所得控除の金額は、所得税と住民税で異なるものもあります。
住民税の納税通知書は毎年6月ごろに、納税者に送られてきます。現金や口座引き落としのほか、市区町村によってはクレジットカードやペイジーによる納付も可能です。
滞納した場合は延滞金がかかります。滞納が続くと財産の差押えを受ける場合もありますので注意しましょう。
【監修者プロフィール】
並木 一真(なみき かずま)
税理士、1級ファイナンシャルプランナー技能士、相続診断士、事業承継・M&Aエキスパート
2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等、幅広く税理士業務に取り組んでいる。