誰かの心を豊かにするために。フォロワー23万人の花教室講師に聞く【増田由希子】
今回は、ご自身の活動をSNSなどでも積極的に発信し、インフルエンサーとしても活躍している「増田由希子」さんにインタビューをしてきました。
Instagramのフォロワー数は23万人超え。繊細で美しい色使いで多くの人から支持を集めるフラワースタイリスト、増田由希子さん。花教室やNHK文化センターでの講師、オリジナルワイヤー花器の制作など、その活動は幅広く、「花とともに暮らすこと」の素晴らしさを世界へ広め続けています。
本日は、そんな増田さんにお話を伺いました。講師として、そして花に魅了された者として、伝えたいこととは。読者のみなさんへのメッセージをお届けします。
これまでの活動について
増田由希子(以下、増田) 「きっかけは、OL時代に通っていたフラワーアレンジメント教室でした。事務職の仕事が自分に合っているのかずっと悩んでおり、そこで出会ったのが、旅先での信州・八ヶ岳の雄大な山々や可憐な草花。自然に近い仕事がしたいな、と思うようになりました。そんなとき、会社近くのお花屋さんでたまたまフラワーアレンジメント教室の張り紙を見つけまして。3年間通い、アレンジの基礎をすべて学びました」
-その後出会ったのが、後に師となるフラワーアーティストの存在でした。
増田 「摘んできたばかりの草花をさっと生けたようなナチュラルなスタイルに心奪われて、その先生のもとで学んでみたいと思いました。仕事をしながら2年間教室に通った後、会社を辞めて教室のスタッフになりました」
-教室を辞めてからは、アルバイトを行いながら仲間たちとさまざまな活動を行ったそうです。手押しの花車を作り、自由が丘を練り歩いたこともあるとか。
増田 「仲間たちとは数年して自然に解散してしまったのですが、やっぱり花の仕事を続けたい、という思いが強くて。1人で何か始められることはないかと思い、自宅で小さな花教室を開きました。ウェディングショップに作品集を持ち込んで営業をしたりしながら、花の仕事を少しずつ広げていきました」
-企業を相手に仕事をするようになった頃、新しい世界が扉を開けました。
増田 「雑貨店に、リースをおろすことになりました。ヤシの繊維を紐状にしたものをリース状にまるめて、試験管に固定して、生花を飾れるようなリースの花器を作ってご提案しました。それをきっかけに花器作りを始めるようになりました。当時、摘んできた花をさっと飾れるような、シンプルな花器がほとんどなかったので自ら製作して見ようと思ったのです」
-それからも、多くの人々との出会いがあったそうです。書籍の出版や写真撮影の仕事と結びついていき、現在の活動へつながっていきます。
講師として、生徒に寄り添うこと
増田 「生徒さんが『教室に通うのが楽しい』とか『新しいことを見つけられた』と言ってくださると、お役に立ってるんだなとやりがいを感じます。NHK文化センターでの講師活動は、当時の職員の方が私のInstagramを見てくださって、お声掛けしていただいたことがきっかけでした。働いていた花教室の先生が、『暮らしに飾る花』を提案する第一人者の方でしたので、私もその提案を教室でも続けたいなと思い、活動しています」
-現在、講座に参加しているのは若い方から70代の方まで、世代はさまざま。教室で使用する花選びには、ポイントがあるそうです。
増田 「生徒さんのお顔を思い浮かべながら、選ぶようにしています。色に悩んだときは、生徒さんがいつも着てらっしゃるファッションとか、インテリアのご趣味をイメージしながら。花は、教室で生けて、テーブルの上で完結するものではないんです。暮らしの背景や、空間に合わせてこそ生きてくるもの。生徒さんに生けていただくときも、飾る場所や背景を考えながら生けてくださいということはお伝えしています」
「講師活動では、人に教えることの難しさを常に感じています。生け方の基本はお教えできるんですけれども、花はやはり感性の部分が大きい。それをお伝えするのが難しいなと。私はお花のサンプルを用意していないんです。サンプルを用意すると、そのイメージに引っ張られてしまうと思いますし、花はやっぱり生き物なので。まったく同じにはならないですし、自分で素敵だと思うものを見つけて生けていただくのが、1番いいと思います。その方らしいお花を生けてもらうことが、最終的な目標ですね」
SNSでの発信が、自然と仕事に結びついた
増田 「自身の活動を知ってもらうには、大変良い機会だと思いました。花のスタイルを知っていただくことで、仕事の依頼も増えました。Instagramは、仕事につなげたいと思って始めたわけではなくて。写真が少しでも上達すれば、という思いで続けていました。私にとってInstagramは世界への扉のようなもので、本当に多くの刺激を受けています。趣味で続けていたものが、自然と仕事へつながっていた感じですね」
「講師として教えることで、日本も海外のように花のある暮らしがあたりまえになってくれたらと考えています。教室を長く続けてくださっている生徒さんは、『花のない生活は考えられない』とおっしゃってくださるので、少しは私が役に立てているのかなと感じています」
-花が与えてくれるものの大きさを、今も強く感じると話されていました。写真やインテリアなど、他の分野にも興味を抱くきっかけになったとのこと。
増田 「私自身も、花に出会ってから暮らしが変わりました。外を歩いていても、花の香りに敏感になったり、樹木の神秘や足元の草花に目が留まったり。花や植物から、季節の移り変わりを感じられるようになりました。花に興味を持つことで、こんなに心が豊かになる。それを講師として伝えていって、1人でも多くの方に実感してもらえたら、『教える』ということに意義を感じるのではないかな」
これからの展望と、自らの作品について
増田 「自宅近くの畑で、花を育ててみたいと思っています。育てた花を教室で生けていただきたいなって。これから勉強してみたいと考えています」
-フラワースタイリストや講師として大いに活躍しながらも、まだまだ新しい勉強を始めたいと語る増田さん。この貪欲さが、作品の重層的な魅力につながっているのかもしれません。また、そんな自分の作品の魅力については「色合わせ」を挙げていました。
増田 「カラーの学校にも通ったことがあります。やっぱり花は色のあるものですから、いつも考えていますね。ただ、自然にある色がもっとも美しいと思っているので、自然の中で感じられないような色使いはあまりしないようにしています。ピンク系や暖色系だったら、夕焼け空のグラデーションを思い浮かべたりとか。自然からインスピレーションを受けて、花を選んだり生けたりしているので、いつも背景に自然がある感じです。生けるときも、『この花は自然の中でどんなふうに咲いているのか』とか、『どういう姿が自然なのか』を1番に考えています」
読者へのメッセージ
-最後に、これから講師として活躍したい人へメッセージをいただきました。
増田 「花の教室をやっていて良かったと思うのは、生徒さんたちと出会えたこと。教える側と学ぶ側で立場は違いますが、花が好きっていう共通点があるので、一緒に過ごす時間がとても楽しいです。私も、学ばせていただいていることがたくさんあります。人との出会いを大切にしたい方や、自分自身を成長させたいと思っている方には、ぜひ教室を始めていただきたいです」
-増田さんが一番好きな花は、木蓮だそうです。木蓮の花言葉は、「自然への愛」。自然とは、誰もが関わるもの。自然と向き合うことを大切にしている増田さんだからこそ、講座でも多くの人々を惹きつけ続けているのかもしれませんね。