個人事業主の「所得税」、計算方法や支払方法はどうなっているの?
所得税は、個人の所得に対して課される税金です。個人事業主は1月1日から12月31日までの所得を計算し、申告します。納税額の計算を自動的に行ってくれる会計ソフトもたくさんありますので、心配しすぎることはありません。でも、所得税の基本的な仕組みや計算方法については、きちんと知っておくほうが、安心して申告と納税ができるでしょう。
所得税が課税される所得は10種類
所得とは、収入から収入を得るために支出した金額(経費)を差し引いたものを指します。
所得=収入-経費
所得税法は、所得を次の10種類に区分しています。
所得の種類 |
具体例 |
利子所得 |
預貯金や公社債の利子 |
配当所得 |
株主や出資者が法人から受ける配当 |
不動産所得 |
所有する不動産から得られる地代、家賃 |
事業所得 |
農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得 |
給与所得 |
勤務先から受ける給料や賞与 |
退職所得 |
勤務先から受ける退職手当、厚生年金保険法に基づく一時金 |
山林所得 |
山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡したりすることによって生ずる所得 |
譲渡所得 |
土地、建物、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得 |
一時所得 |
懸賞や福引の賞金品、生命保険の一時金 |
雑所得 |
上記のどれにもあてはまらない所得 |
個人事業主(先生)としての収入に関しては「事業所得」に該当しますが、会社員として働きながら別途副業として収入を得ている場合には「雑所得」に該当するケースが一般的です。
所得税の計算方法
基本的な所得税の計算の流れをご紹介します。
▼所得税計算のおおまかな流れ
所得税額の計算は次の順番で行います。
収入-経費=所得
所得-所得控除=課税所得
課税所得×税率=所得税額
所得税額 -(税額控除+源泉徴収税額)=申告納税額
同じ収入があった場合でも、経費や所得控除、税額控除をどのくらい計上するかによって申告納税額は変わります。経費は漏れなく計上し、該当する所得控除や税額控除は忘れずに利用することで節税になります。
▼課税所得から所得税額を計算する方法
所得税の税率は課税所得額によって変わります。具体的には、国税庁より公表されている「速算表」を使用します。
速算表を用いて所得税額を計算する場合、次の算式を使います。
所得税額=課税される所得金額(※)×税率-控除額
(※)千円未満の端数金額を切り捨てる
課税される所得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで |
5% |
0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで |
10% |
97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで |
20% |
427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで |
23% |
636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで |
33% |
1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで |
40% |
2,796,000円 |
40,000,000円 以上 |
45% |
4,796,000円 |
出典 国税庁:「No.2260 所得税の税率」
たとえば課税所得金額が400万円の場合、速算表を用いると次のような結果が出ます。
所得税額=課税所得金額×税率-控除額
=400万円×20%-42万7,500円
=37万2,500円
▼源泉徴収されている所得税がある場合
個人事業主(先生)が、生徒から月謝を受け取るときは、契約した金額をそのまま受け取ることになります。
しかし、雑誌やWeb媒体に寄稿した場合の原稿料や、企業に招かれて講演を行った場合の講演料は、報酬から所得税額分を源泉徴収された金額で受け取ることとなります。
入金時に源泉徴収された金額がある個人事業主は、確定申告時に所得税額から源泉徴収税額を差し引いた金額を納税することになります。
確定申告と納税について
次に確定申告や納税の方法、申告納税額が0円になる場合についてなどの解説を行います。
▼申告と納税の方法
個人事業主は1年分の事業にかかる収入や支出についてまとめた「青色申告決算書」もしくは白色申告の「収支内訳書」を作成し、事業所得の計算を行います。会計ソフトによっては、きちんと収入や支出を入力していれば、書類の作成まで自動的に行われるものもあります。
青色申告決算書または収支内訳書を作成した上で、事業所得以外の所得も含めた1月1日から12月31日までの所得を「確定申告書」に記入し、確定申告期限である翌年3月15日までに申告し、納税します。
納税の方法は、銀行口座を使った振替納税、またはe-Taxでの納付方法、専用のWeb画面からクレジットカードを用いて納付する方法、コンビニでQRコードを用いて納付する方法、金融機関または税務署の各窓口にて現金納付する方法などがあります。
▼所得税が0円となるとき
所得税額を計算した結果、申告納税額が0円になる場合もあります。
所得税額が0円となるのは、以下の2通りに分かれます。
1. 所得が0円以下となる場合
2. 課税所得金額が0円となる場合
1に関しては、事業所得で赤字が発生した場合など、そもそも所得が0円やマイナスとなっているケースでは、その後の課税所得金額も0円となることから、納付すべき所得税額も0円となります。
2に関しては、所得の合計額よりも所得控除額が大きければ、課税所得金額は0円となるため、所得税額も0円となります。
たとえば事業所得が基礎控除の48万円を下回り、そのほかに所得がなかった場合は、所得税額は0円です。基礎控除額以上の所得がある場合も、配偶者控除や生命保険料控除など、所得控除の合計額のほうが大きい場合には、課税所得金額が0円となるため、所得税額も0円となります。
また青色申告をしている個人事業主は、事業で赤字が出た場合、その損失を3年間繰り越すこともでき、繰り越した赤字を翌年の黒字と相殺することが可能です。この仕組みを使った結果、所得や課税所得金額が0円となる場合には、所得税額が0円となることもあります。
なお納付すべき所得税額が0円であれば確定申告義務はありませんが、報酬から差し引かれた源泉徴収税額がある場合には、それらの還付を受けるために確定申告をしたほうが好ましいケースもあります。
まとめ
所得税は個人事業主の1年間の所得に対して課税される税金です。1年間の所得について、翌年の確定申告期限までに申告し、納税しましょう。
1年間の所得から所得控除額を差し引いた課税所得額と、課税所得額に応じて定められた税率を用いて所得税額を計算します。所得税額から税額控除額を差し引くことで申告納税額を算出することができます。
源泉徴収によりすでに納付した所得税がある場合は、所得税額から源泉徴収税額を差し引いた金額を納付します。
【監修者プロフィール】
服部 大(はっとり だい):税理士/中小企業診断士
2020年2月30歳のときに名古屋市内で税理士事務所を開業。平均年齢が60歳を超える税理士業界では数少ない若手税理士。
単発の税務相談や執筆活動なども行い「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。同年代の経営者やフリーランス、副業に取り組む方々の良き相談相手となれるよう日々奮闘中。
服部大税理士事務所:https://zeirishihattori.com