【保存版】個人事業主の経費はどこまで認められる? 種類ごとに一覧紹介
個人事業主(先生)の活動には、さまざまな経費がかかります。帳簿をつけるとき、経費をできるだけ多く計上することは節税につながります。しかし、経費と認められないものまで計上してしまうと、脱税行為になります。経費とはなにか、どこまでが経費と認められるのか、そのボーダーラインについてもご紹介します。
そもそも経費とは?
教室を開いて生徒を集め、生徒が満足する授業を続けていくには、費用がかかります。教室経営という事業を行う上で発生した費用のことを「経費」と呼びます。
経費にはどのようなものがある?
帳簿をつけたり、確定申告をしたりするときには、「経費」とひとまとめにするのではなく、「どのような経費が」「いくらかかったか」を分かるようにします。教室開講、経営をする個人事業主がよく使う勘定科目をご紹介します。
個人事業主なら知っておくべき確定申告とは?やり方をわかりやすくご紹介
勘定科目 |
例 |
広告宣伝費 |
教室やイベントの情報を告知するチラシ、ネット広告、メディアに出稿する場合の費用、名刺、パンフレットにかかる費用 |
消耗品費 |
ノートやペン、コピー用紙、領収証用紙、机、椅子などの費用 |
接待交際費 |
教室関係者との飲食代、事業に関係がある人へのお中元やお歳暮、ご祝儀や香典 |
旅費交通費 |
自宅から教室まで通う費用、駐車料金、出張の際の宿泊費 |
通信費 |
インターネット接続料金、電話代、切手やはがきなどの費用 |
荷造運賃 |
梱包のためのテープ、ひも、包装紙の代金、荷物の配送料 |
新聞図書費 |
教室経営や授業に役立てるために購入した新聞、雑誌、書籍などの費用 |
研修費 |
業務に必要な知識を得るためのセミナーや研修の受講料、教材代、会場への交通費 |
水道光熱費 |
事業のために使った水道、電気、ガスの代金 |
租税公課 |
印紙税、事業税、固定資産税、事業用の自動車税 |
支払保険料 |
事業用の資産を守るための保険料など |
修繕費 |
事業用の物品や資産の修理にかかった費用 |
地代家賃 |
教室や事務所の家賃 |
福利厚生費 |
従業員を雇用している場合、従業員の健康診断費用や社員旅行代、残業時の食事代など |
経費にならない支出に注意!
個人事業主が経費にできないものの例は、次の通りです。
内容 |
注意点 |
個人事業主自身の健康診断費 |
従業員の健康診断費は経費 しかし、個人事業主自身の健康診断費は経費にできない |
個人事業主や家族の福利厚生費 |
個人事業主自身のスポーツクラブ代など |
住民税、所得税 |
これらの税金は事業主自身にかかるもので、事業の上で生じた費用ではないため経費にできない |
その他事業と関係のない費用 |
友人との飲食代や帰省のための旅費交通費など、事業の売上につながらないものは経費とは認められない |
領収証やレシートを集めて経費の支払いを証明する
経費として帳簿に書き込んだ支出は、領収証、レシート、事業用クレジットカードの利用明細書などで、その支払いを証明する必要があります。領収証をもらうことが一般的ではない支出もあるため、次のようなものを記録として残しておきましょう。
- ご祝儀や香典……のし袋の表書きをコピーしたもの、招待状や会葬礼状など
- ネット通販……購入時の確認画面、確認メール
- 自動販売機の購入……出金伝票に支出の内容を記録したもの
領収証は所得税法上、「現金預金取引等関係書類」に該当します。青色申告を行う個人事業主は、領収証を7年間保管する必要があります。
なお、前々年分の所得が300万円以下の場合は、5年間保管すればよいことになっています。白色申告の個人事業主は5年間保管します。消費税の課税事業者である個人事業主は、所得税の申告方法にかかわらず、領収証を7年間保管する必要があります。
経費と認められる?認められない?具体例をご紹介
経費と認められるのは「事業に直接関係がある支出」です。具体的にどのような支出が、どこまで経費として認められるのかをご紹介しましょう。
自宅兼事務所の水道光熱費、インターネット接続料金は?
自宅の一部を教室や事務所として使っている場合、例えば水道光熱費やインターネット接続料金の全額を経費にできるのではなく、「事業と関係がある部分」だけを経費として計上することができます。
これらの料金は、一括して水道局やインターネット接続業者に支払いますが、帳簿をつけるときは、生活費と事業用の支出を分け、事業用支出のみを経費として計上する「家事按分」が必要になります。この場合の事業用割合は、床面積の比率などによって按分することとなります。
自動車のガソリン代、駐車違反の罰金は?
自家用車を事業用にも使っている場合、ガソリン代、駐車場代、高速代などで、事業に関係がある移動のための支出は、経費にできます。ただし、駐車違反やスピード違反による罰金は経費に計上することができません。
スーツ、眼鏡は?
スーツをはじめとする衣類は、日常生活でも使えるものであるため、経費として計上することは難しくなります。どうしても経費に計上したい場合は独断で行わず、税理士など専門家に相談してください。また、眼鏡は経費にできないとされています。
仕事上でケガをした場合
個人事業主自身が、仕事上でケガをした場合、その治療費を経費とすることはできません。
ただし治療費は、医療費控除の対象に含めることができます。
セミナー参加費や異業種交流会の費用は?
教室運営に関係があるセミナーに参加した場合、その参加費は「研修費」などの勘定科目を使って経費に計上することができます。人脈づくりを目的として、異業種交流会などに参加した場合、その費用を「接待交際費」や「諸会費」として経費に計上することができます。
固定資産の取り扱いは?
教室経営のために使う高額なパソコンや、教室で使う作業台など、何年にもわたって収益を上げるために役立てる資産は「固定資産」と呼ばれます。固定資産を取得した場合、一度に経費として計上するのではなく、固定資産として帳簿に記帳し、減価償却をする必要があります。
消耗品と固定資産の分かれ目とは?
消耗品費と認められるのは次の場合です。
- 取得にかかった費用(付随費用を含む)が10万円未満
- 使用可能期間が1年未満のもの
取得にかかった費用は「取引の単位ごと」に判定するというルールがあります。例えば「椅子とテーブル」のようにセットで使うものを購入した場合、1組ごとに判断します。
個人事業主で青色申告をしている人は「少額減価償却資産の特例」を受けることも可能です。1個(または1組)あたり30万円未満の少額減価償却資産は、購入または使用開始した年度に一括して経費とすることができる、という特例です。
固定資産の減価償却とは?
減価償却とは、固定資産の取得にかかった費用を、何年もの時間をかけて少しずつ経費として計上していくというルールのことです。
例えば、100万円の作業台を購入した場合、その期に100万円の経費を計上するのではなく「1期目は10万円、2期目に10万円、3期目に10万円……」というように、複数年にわたって経費化します。
減価償却には、さまざまなルールが存在します。
- 毎年いくらずつ経費として計上するか?
- 何年にわたって経費を計上するか?
- 中古資産の場合はどうするか?
確定申告の際には、ルールに則っているかの確認が必要です。
まとめ
個人事業主(先生)の活動には、さまざまな費用がかかります。事業に関係のある支出は漏らさず「経費」として計上し、節税につなげましょう。ただし、経費と認められない支出まで計上してはいけません。経費とそうでないものの境目について理解しておきましょう。
また、長い期間にわたって使用する高額な資産は「固定資産」として減価償却をする必要があります。さまざまなルールを守って確定申告を行うことが、個人事業主(先生)の仕事を長く続けるために重要なポイントです。
【監修者プロフィール】
服部 大(はっとり だい):税理士/中小企業診断士
2020年2月30歳のときに名古屋市内で税理士事務所を開業。平均年齢が60歳を超える税理士業界では数少ない若手税理士。
単発の税務相談や執筆活動なども行い「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。同年代の経営者やフリーランス、副業に取り組む方々の良き相談相手となれるよう日々奮闘中。
服部大税理士事務所:https://zeirishihattori.com