青色申告って何?白色申告とは何が違う?メリットやデメリットについても詳しく解説
所得税の確定申告の種類には、青色申告と白色申告があります。これから確定申告をする人、すでに確定申告を行ったことがあり節税を考えている人には青色申告がおすすめです。
今回は、青色申告と白色申告では何が違うのか、青色申告にはどのようなメリットやデメリットがあるのかをご紹介していきます。青色申告か白色申告か迷ったときの参考にしてみてください。
青色申告とは?申請方法や提出書類を知ろう
事業を始めて確定申告が必要になった人、確定申告は行ったことがあり節税を考えている人などは、確定申告について調べていくうちに「青色申告」という言葉を目にしたこともあるでしょう。節税を考えるのであれば「青色申告」といわれますが、青色申告とはどのような制度なのでしょうか。青色申告の概要と制度の適用を受けるための方法についてご紹介します。
青色申告とは
青色申告とは、納税者が税法に従って、正しく所得金額と所得税額を計算するために設けられた制度のことです。所得税の青色申告制度では、青色申告の申請をし、一定の水準を満たす記帳に基づき正しく申告を行った納税者に対して、いくつかの特典を設けています。
所得税の青色申告制度は、確定申告の制度のひとつです。確定申告について詳細を知りたい場合は、下記の記事をご覧ください。
個人事業主なら知っておくべき確定申告とは?やり方をわかりやすくご紹介
青色申告の適用を受けるには
青色申告制度は、一定の水準を満たす記帳を行ったからといって、自動で適用される制度ではありません。青色申告制度を利用するには、所轄の税務署への申請が必要です。
新規に事業を始め、初年度から青色申告制度の適用を受けたい場合は、事業開始から2か月以内に「青色申告承認申請書」を提出します。
これまでは白色申告で、新たに青色申告制度を利用したいときは、適用を受けたい年の3月15日までに「青色申告承認申請書」の提出が必要です。
相続によって事業を承継するときは、被相続人(亡くなった人)が白色申告者のときは承継した日から2か月以内、被相続人が青色申告者で亡くなった日が1月1日~8月31日までであれば亡くなった日から4か月以内、亡くなった日が9月1日~10月31日までであれば同年の12月31日まで、亡くなった日が11月1日~12月31日までであれば翌年の2月15日までに申告書の提出が必要です。
▼青色申告承認申請書は、国税庁のページからダウンロードできます。
参考:[手続名]所得税の青色申告承認申請手続|国税庁
青色申告で必要な確定申告書への添付書類
事業所得者や不動産所得者は、収支の内訳として「収支内訳書」を作成し、確定申告書に添付しなくてはなりません。青色申告制度を利用する事業所得者や不動産所得者については、収支内訳書は必要ないものの、代わりに「青色申告決算書」の作成と確定申告書への添付が必要です。
青色申告決算書とは、決算書(ここでは貸借対照表と損益決算書)と減価償却費の計算など重要事項の内訳から構成された、青色申告者に作成が義務づけられる添付書類です。
青色申告と白色申告の違いは?
確定申告には、青色申告のほか、白色申告があります。青色申告と白色申告の主な違いは、下記の通りです。
税務署への申請 | 特典 | 保存が必要な帳簿書類 | |
青色申告 | 必要 | あり | 多い |
白色申告 | 不要 | なし | 少ない |
では、それぞれについて詳しくご紹介していきます。
申請の有無
青色申告は、先述の通り、適用を受けるためには所轄の税務署に青色申告承認申請書を提出しなければなりません。これは、青色申告制度が一定水準を満たす記帳を行い、正しい所得税の計算を行う意思のある納税者に対して設けられた制度であるためです。
一方、白色申告は、青色申告のような申請は必要ありません。青色申告を選択しない(青色申告承認申請書を提出しない)所得税の確定申告者は、自動的に白色申告での確定申告になります。
特典の有無
代表的な特典の詳細は青色申告のメリットで取り上げますが、青色申告を選択すると、次のような特典が受けられます。
- 青色申告特別控除
- 青色事業専従者給与
- 純損失の繰り越しと繰り戻し
- 貸倒引当金の設定(回収不能に備えた設定が可能)
- 棚卸資産の低価法の選択
- 少額減価償却資産の特例
など
一方、白色申告には、青色申告のような特典はありません。節税に有利な制度の利用を考えるのであれば、青色申告を選択することをおすすめします。
保存が必要な帳簿書類
青色申告では、作成や保存が必要な帳簿書類が決まっています。帳簿に関しては、複式簿記で作成する仕訳帳や総勘定元帳、現金出納帳、固定資産台帳などの関連する書類の保存が必要です(※帳簿に関しては簡易帳簿も認められます)。ほかにも、決算関係書類である損益計算書や貸借対照表、現金預金取引を証明する領収証や預金通帳、取引に関連する書類の保存が求められます。
一方、白色申告は、青色申告ほど保存が必要な帳簿書類は厳しく定められていません。法定帳簿である収入金額や必要経費を記載した帳簿(日計表など)は保存が必要ですが、あとは、任意帳簿や決算に関連する書類、業務に関連する書類の保存が必要と定められているのみです。
青色申告のメリットとデメリット
青色申告制度は結局のところ利用した方がよいのか、申請する前に知っておくべき主なメリットとデメリットをご紹介していきます。
メリット1「青色申告特別控除の適用がある」
青色申告制度の利用においての大きなメリットは、「青色申告特別控除」の適用を受けられる点です。青色申告特別控除とは、青色申告者である事業所得者または不動産所得者が、所得から一定額を控除できる特典です。原則は最大55万円、電子申告または電子帳簿保存の適用者は最大65万円、簡易簿記選択者は最大10万円が受けられる控除額です。所得は、青色申告特別控除の分だけ下がるため、結果的に所得税を節税できます。
メリット2「事業の赤字を翌年以降に繰り越せる」
白色申告では、事業に赤字があってもその年で完結するため、赤字の繰り越しはできません。一方、青色申告者は、があれば、繰り越しまたは繰り戻しができます。繰り越しとは、控除しきれない赤字を次の年以降の控除にも持ち越せることで、翌年以後3年間まで損失の繰り越しができます。繰り戻しとは、損失を前年に繰り戻して所得税の還付を受けることです。繰り戻しは、前年度も青色申告であった場合に限り適用できます。
メリット3「青色事業専従者給与が認められる」
青色事業専従者給与は、生計を一にする配偶者や親族(15歳以上に限る)が専従している場合、税務署長への青色事業専従者給与に関する届出書の事前提出を要件に、給与として支払った額を全額経費にできる制度です。白色申告にも、青色事業専従者給与に似た、事業専従者控除がありますが、経費にできる範囲が限られます。白色申告の事業専従者控除で経費にできる額は、配偶者で年間86万円、親族で年間50万円までです。青色申告なら、必要な経費計上による節税効果が期待できます。
デメリット「白色申告より記帳が複雑」
青色申告は、白色申告と異なり、複式簿記による一定水準の記帳が必要です。記帳が複雑なため、確定申告初心者では難しいと感じてしまうことがあるでしょう。
記帳の面を考えると青色申告は難しい面もありますが、最近では会計ソフトなども利用しやすくなってきたことから、青色申告のハードルはそこまで高くありません。記帳面に問題がなければ、青色申告がおすすめです。
まとめ
確定申告には、白色申告のほか、青色申告制度があります。青色申告制度とは、納税者が一定の水準を満たす記帳を行い、正しい申告や納税を行うことを条件に、納税者に有利なさまざまな特典を認めた制度です。
青色申告は、青色申告特別控除をはじめとした、節税に使える特典がいくつもあるため、しっかり節税したいのであれば青色申告がおすすめです。
なお、青色申告は記帳が煩雑なイメージもあるかもしれませんが、会計ソフトなど便利なサービスを利用すれば、確定申告初心者でも記帳はそこまで難しくありません。青色申告で確定申告を考えるのであれば、利用するサービスを検討するとよいでしょう。
九州電力の運営する おけいこタウンは、講座開催や教室開講を考えている人と習いごとをしたい人を結ぶマッチングプラットフォームです。講座開催や集客、決済、施設スペース提供などのサポートも行っているため、未経験の方も安心して利用することができます。確定申告はもちろん、事業を始めるのであれば、いかに効率良くできるかも考えていきましょう。
【監修者プロフィール】
並木 一真(なみき かずま)
税理士、1級ファイナンシャルプランナー技能士、相続診断士、事業承継・M&Aエキスパート
2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等、幅広く税理士業務に取り組んでいる。