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個人事業主の平均年収ってどのぐらい?年収毎の税金、年収の概念や計算方法について

  • #フリーランス
  • #個人事業主
  • #税金・保険
  • #経営

個人事業主になるのであれば、気になるのは「どのくらいの年収が得られるか?」ということではないでしょうか?
個人事業主の平均年収や、税金をどのくらい納めなければいけないのか、その目安を事前に知っておけば、資金繰りについて検討することができます。

この記事では、個人事業主の平均年収や税金の額、年収の計算方法についてご紹介します。

個人事業主の平均年収ってどのくらい?

企業に雇用されている人は、税金や社会保険料が天引きされた金額が、自分の口座に振り込まれます。しかし、個人事業主は1年間に得られた収入の中から、事業に必要な売上原価、経費、税金、社会保険料などを支払わなければなりません。個人事業主の収入を表す言葉には、次のようなものがあります。

年収……事業の売上以外も含めた1年間の収入 ※家賃収入や利息などがあるならそれも含めた金額

年商……1年分の事業での売上総額

所得……年収や年商から経費を差し引いた金額

既に述べたように、個人事業主は入ってきたお金を全て自由に使えるわけではありません。そのため「個人事業主の年収」という言葉は、基本的に所得=(収入-必要経費)をさします。この金額は「税込年収」と呼ばれることもあります。

また、個人事業主は税金や保険料を自分で支払わなければなりません。所得から税金や保険料を差し引いた金額を「手取り年収」と呼びます。

個人事業主の平均年収を知るための参考資料として、令和元年分の国税庁「申告所得税標本調査結果」があります。この資料によると、令和元年の事業所得者の平均所得額は425万円です。

このことから、個人事業主の平均所得額が少しずつ上昇傾向にあることがわかります。

また、事業所得者の所得階級別申告納税者数と割合は次の表のようになっています。

事業所得者の所得階級別申告納税者数と割合

区分 人数(単位:千人) 割合(単位:%)
100万円以下 181 10.8
100万円超 200万円以下 429 25.7
200万円超 300万円以下 354 21.2
300万円超 500万円以下 375 22.5
500万円超 1,000万円以下 225 13.5
1,000万円超 2,000万円以下 68 4.0
2,000万円超 5,000万円以下 31 1.8
5,000万円超 1億円以下 6 0.3
1億円超 2 0.1
合計 1,669

個人事業主の年収ごとの税金ってどれぐらいかかるの?

個人事業主として収入を得るようになったら、所得税や住民税をはじめとする税金を納付しなければなりません。税金の金額はどのくらいになるのでしょうか?

個人事業主の税金の平均額は?

令和元年分の国税庁「申告所得税標本調査結果」によると、事業所得者が納めている税金(所得税)の平均額は、50万4,000円です。

個人事業主が納める税金や保険料は?

個人事業主は、所得税以外にもいくつかの税金や保険料を納付しなければなりません。

個人事業主が納付しなければならない税金や保険料

※事業所得のみ生じているものとします。

納付するもの 内容 計算方法
所得税 1年間の所得にかかる税金

税率は所得が多くなるほど高くなる仕組み

所得-青色申告特別控除=所得(青色申告特別控除後)

所得(青色申告特別控除後)-各種控除=課税所得

課税所得×税率-税率に応じた控除額=所得税額

住民税 住んでいる市区町村に納付

ゴミ処理などの公共サービスのために使われる

所得-青色申告特別控除=所得(青色申告特別控除後)

所得(青色申告特別控除後)-各種控除=課税所得

課税所得×税率+均等割額=住民税額

国民年金保険料 20歳から59歳のすべての人が加入する年金保険の保険料 1か月あたり16,610円(令和3年度現在)
国民健康保険料 都道府県および市町村が保険者となって運営する公的な医療保険制度の保険料 所得-青色申告特別控除=所得(青色申告特別控除後)

所得(青色申告特別控除後)-基礎控除=基準額

基準額×保険料率(医療)=所得割(医療)

基準額×保険料率(支援)=所得割(支援)

基準額×保険料率(介護)=所得割(介護)

均等割額(医療)×加入者数=均等割(医療)

均等割額(支援)×加入者数=均等割(支援)

均等割額(介護)×該当者数=均等割(介護)

所得割(医療)+均等割(医療)+平等割(医療)=国民健康保険料(医療分)

所得割(支援)+均等割(支援)+平等割(支援)=国民健康保険料(支援分)

所得割(介護)+均等割(介護)+平等割(介護)=国民健康保険料(介護分)

国民健康保険料(医療分)+国民健康保険料(支援分)+国民健康保険料(介護分)=国民健康保険料

個人事業税 個人事業主が営む事業の種類や事業収入額によっては個人事業税がかかる場合もある (事業所得金額-各種控除額)×税率=個人事業税

年収ごとにどのくらい税金や保険料がかかる?

年収ごとに、どのくらい税金や保険料がかかるか試算しましょう。なお、個人事業税については、今回は計算の対象外とします。

個人事業主の年齢は30歳、配偶者あり(配偶者を扶養していない)、配偶者以外の扶養親族なしとします。

また、事業収入以外には収入がなく青色申告特別控除65万円を受けているものとします。

※シミュレーションに使用したツール
個人事業主シミュレーション

年収が400万円 経費が100万円のとき

項目 金額(単位:円)
年収 4,000,000
所得税 71,700

4,000,000-1,000,000-650,000=2,350,000

2,350,000-480,000(基礎控除)-199,320(国民年金)-235,000(国民健康保険料)=1,435,680 → 1,435,000

1,435,000×5%=71,700円

住民税 153,500

4,000,000-1,000,000-650,000=2,350,000

2,350,000-430,000(基礎控除)-199,320(国民年金)-235,000(国民健康保険料)=1,485,680  → 1,485,000

1,485,000×10%+5,000=153,500

国民年金保険料 199,320  16,610×12=199,320
国民健康保険料 235,000

4,000,000-1,000,000-650,000=2,350,000

2,350,000-430,000=1,920,000

1,920,000×7.13%=136,896

1,920,000×2.41%=46,272

38,800×1=38,800

13,200×1=13,200

136,896+38,800=175,696 → 175,600

46,272+13,200=59,472 → 59,400

175,600+59,400=235,000

手取り 3,340,480

年収が600万円 経費が100万円のとき

項目 金額(単位:円)
年収 6,000,000
所得税 226,900

5,000,000-1,000,000-650,000=4,350,000

4,350,000-480,000(基礎控除)-199,320(国民年金)-425,800(国民健康保険料)=3,244,880 → 3,244,000

3,244,000×10%-97,500=226,900

住民税 334,400

5,000,000-1,000,000-650,000=4,350,000

4,350,000-430,000(基礎控除)-199,320(国民年金)-425,800(国民健康保険料)=3,294,880 → 3,294,000

3,294,000×10%+5,000=334,400

国民年金保険料 199,320

16,610×12=199,320

国民健康保険料 425,800

5,000,000-1,000,000-650,000=4,350,000

4,350,000-430,000=3,920,000

3,920,000×7.13%=279,496

3,920,000×2.41%=94,472

38,800×1=38,800

13,200×1=13,200

279,496+38,800=318,296 → 318,200

94,472+13,200=107,672 → 107,600

318,200+107,600=425,800

手取り 3,813,580

年収が800万円 経費が100万円のとき

項目 金額(単位:円)
年収 8,000,000
所得税 583,300

8,000,000-1,000,000-650,000=6,350,000

6,350,000-480,000(基礎控除)-199,320(国民年金)-616,600(国民健康保険料)=5,054,080 → 5,054,000

5,054,000×20%-427,500=583,300

住民税 515,400

8,000,000-1,000,000-650,000=6,350,000

6,350,000-430,000(基礎控除)-199,320(国民年金)-616,600(国民健康保険料)=5,104,080 → 5,104,000

5,104,000×10%+5,000=515,400

国民年金保険料 199,320

16,610×12=199,320

国民健康保険料 616,600

8,000,000-1,000,000-650,000=6,350,000

6,350,000-430,000=5,920,000

5,920,000×7.13%=422,096

5,920,000×2.41%=142,672

38,800×1=38,800

13,200×1=13,200

422,096+38,800=460,896 → 460,800

142,672+13,200=155,872 → 155,800

460,800+155,800=616,600

手取り 5,085,380

年収が1,000万円 経費が100万円のとき

項目 金額(単位:円)
年収 10,000,000
所得税 947,900

10,000,000-1,000,000-650,000=8,350,000

8,350,000-480,000(基礎控除)-199,320(国民年金)-793,400(国民健康保険料)=6,877,280 → 6,877,000

6,877,000×20%-427,500=947,900

住民税 697,700

10,000,000-1,000,000-650,000=8,350,000

8,350,000-430,000(基礎控除)-199,320(国民年金)-793,400(国民健康保険料)=6,927,280 → 6,927,000

6,927,000×10%+5,000=697,700

国民年金保険料 199,320

16,610×12=199,320

国民健康保険料 793,400

10,000,000-1,000,000-650,000=8,350,000

8,350,000-430,000=7,920,000

7,920,000×7.13%=564,696

7,920,000×2.41%=190,872

38,800×1=38,800

13,200×1=13,200

564,696+38,800=603,496 → 603,400

190,872+13,200=204,072

支援分の上限は19万円のため190,000として計算

603,400+190,000=793,400

手取り 6,361,680

同じ年収でも、経費が高額になれば所得税額や住民税額、各種保険料は安くなります。

また、同じ年収、同じ経費でも、配偶者や子ども、老親などを扶養している人は所得税額その他の金額が安くなります。

個人事業主の収入について知っておくべきこと

個人事業主が1年間に事業で得られる収入について、もうすこし考えてみましょう。

個人事業主の年収と経費、税金について

個人事業主は事業収入を得るために、売上原価やさまざまな経費をかけています。

売上原価とは商品を仕入れたり、製造したりするためにかかった費用のことで、1年間の売上原価を計算する式は次の通りです。

売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高

また商品やサービスを販売するためにかかった費用は「経費」と呼ばれます。

経費の例

  • 人件費
  • 地代家賃、駐車場代
  • 通信費、水道光熱費、消耗品費など

冒頭で述べた通り、「個人事業主の年収(=税込年収)」とは、収入金額そのものではなく、「所得」を指すことが多いです。

たとえば、銀行融資、住宅ローン、クレジットカードなどの申し込みをするとき、金融機関は「申込者が自由に使えるお金がどのくらいあるのか?」を把握したいと考えています。

融資申込書に「年収」「税込年収」などの記入欄があった場合、収入金額をそのまま書くのではなく、次のように計算した「所得」を記入します。

個人事業主の年収 =1年間に事業で得られた収入-(事業の売上原価+事業にかかった経費)

他の表現方法として「確定申告書Bの所得金額の合計額」を記入するよう求められることもあります。

さらに、個人事業主は、さまざまな税金を納付しなければなりません。税込年収から納税すべき金額や社会保険料として支払う金額を指し引いたものが「手取り年収」です。

手取り年収=個人事業主の年収(=所得)-(税額+社会保険料)

税込年収の計算方法

会社員は源泉徴収票や給与明細で年収を把握することができますが、個人事業主は自分自身で1年間の収入と経費などを把握しなければなりません。そのために帳簿にきちんと記入すること、預金通帳や領収証など収支の証拠となる書類を保存しておく必要があります。

なお、青色申告特別控除や、青色事業専従者給与の控除もしくは事業専従者控除が認められる場合は、総収入額からその控除額も差し引いて計算します。

金融機関に提出する書類等で、年収から売上原価や経費を指し引いた金額の記入を求められることもあるので、下記の表のような書類や方法で確認をしましょう。

税込年収計算のために個人事業主が把握しておくべきことの例

項目 把握するための書類や方法
総収入額 記入した帳簿、売上台帳、預金通帳など
売上原価 記入した帳簿、仕入台帳、請求書、納品書など
期末棚卸高 記入した帳簿、商品有高帳、棚卸の実施など
1年間の経費 記入した帳簿、請求書、納品書、保存しておいた領収証、クレジットカードの利用明細など
青色申告特別控除額 納税者が満たしている要件と納税者の選択による

最高65万円または10万円

青色申告の事業専従控除 「青色事業専従者給与に関する届出書」に記入した給与の金額の範囲内
白色事業専従者控除 納税者が満たしている要件と納税者の選択による

事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円

手取り年収を計算する方法

手取り年収の計算式は次の通りです。

手取り年収=個人事業主の年収(=所得)-(税額+社会保険料)

手取り年収の計算のためには、次のような金額を把握しておくことが必要です。

手取り年収計算のために個人事業主が把握しておくべきことの例

項目 把握するための書類や方法
所得税額 帳簿類をもとに作成する確定申告書など
住民税額 住民税納税通知書
個人事業税額 都道府県税事務所から届く通知
消費税額 帳簿類をもとに作成する確定申告書など
国民年金保険料 日本年金機構から届く国民年金保険料納付案内書
国民健康保険料 国民健康保険料決定通知書

インターネット上で簡単に金額が計算できるシミュレータが公開されているため、それらを利用して試算することもできます。

まとめ

国税庁の統計によると、事業所得者の平均所得額は425万円、事業所得者が納めている税金(所得税)の平均額は、50万4,000円です(令和元年)。

個人事業主の年収の考え方には「税込年収」「手取り年収」があり、計算方法が異なります。どちらの金額も把握しておくと安心です。

帳簿や会計ソフトに、事業収入や経費の支出をこまめに記入して、総収入額や経費の合計額を把握できるようにしましょう。

特に、手取り年収の計算には、税金や保険料をいくら納めているのかを知る必要があります。税務署、市区町村、日本年金機構など公的機関から届く各種通知書を保管しておくと、必要な情報が把握しやすくなるでしょう。

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